利用者の送迎は、介護職の重要な業務の一つだ。しかし、高齢者の場合、体力やバランス感覚の低下から、乗り降りに不安を感じたり、介助が必要となる場合も少なくない。安全でスムーズな送迎を行うためには、運転技術だけでなく利用者の状態に合わせて適切な介助を行う必要がある。介護職員初任者研修では、介護の基本となる知識や技術を学ぶ。その中には、身体の構造や機能、高齢者の身体的な特徴、移動介助の基本などが含まれる。これらの知識を習得することで、利用者がどこでつまずきやすいか、どのように身体を支えれば安全に乗り降りできるのかといった点を理解したうえで介助できるようになる。
車への乗車時、利用者がシートに座る際にふらついてしまう場合には、身体の側面と背面から支えるようにすると安定感が増す。また、足が上がりづらい場合には、軽く持ち上げるように介助したり、踏み台を用意するなどの工夫も必要である。これらの介助は、初任者研修で学ぶボディメカニクスの知識を応用することで、より安全かつ効果的に行えるようになる。さらに、研修では、利用者とのコミュニケーションの重要性についても学ぶ機会がある。その学びを送迎時にも活かし、「もう少し右足を上げてください」「ゆっくりとシートにもたれてください」など具体的に声掛けをすることで、利用者の不安を軽減し、スムーズな動作を促すことが可能だ。もちろん、運転免許を取得していれば、誰でも送迎業務を行うことは可能である。しかし、介護の基礎知識や技術を身につけているかどうかで、送迎時の安全確保や利用者の安心感は大きく変わっくるだろう。